せんだい演劇工房10-BOX 岩村空太郎さん インタビュー

演劇の魅力で人と街を豊かにする「せんだい演劇工房10-BOX」

都心や地方を問わず、各種芸術祭や音楽フェスティバルをはじめ、芸術の力で街を盛り上げる取り組みが全国各地で浸透しつつある昨今。仙台市は“楽都仙台”とも言われるように音楽事業が盛んなことでもよく知られているが、舞台芸術についても積極的な活動を行う“劇都仙台”でもある。そんな劇都の事業拠点として、演劇を取り入れた街づくりに取り組む「せんだい演劇工房10-BOX」の岩村空太郎さんに事業活動や街や人とのつながりについて話を伺った。

せんだい演劇工房10-BOX
せんだい演劇工房10-BOX

演劇を取り入れた街づくりへの試み

――まずは、当施設についてお教えください

岩村さん:「せんだい演劇工房10-BOX」は、「試しながら演劇をつくる空間」をコンセプトに、2002(平成14)年に開館された施設です。演劇の稽古場、舞台装置製作の作業場や資料室などがあり、舞台芸術に携わる人たちが創作できる空間を目指してつくられました。劇団所有の施設や、大きいホールに付随する稽古場などはありますが、演劇に特化したいろいろな設備があり、しかもこれだけ柔軟な運営を行っている公共施設は全国的にもかなり珍しいと思います。また、稽古した後も関係者同士が交流し合える共有スペースなどもあるので、コミュニティ・スポットとしても活用できる場所になっています。施設の利用者は、仙台の劇団の方が一番多いですが、近年は公演のために県外からいらっしゃる方もいますし、観劇やワークショップに参加される一般の方の利用もあります。市民の方や全国の方まで、幅広く利用していただいています。

10-BOXから少し歩いた場所には「能-BOX」という、能舞台を収容した施設があります。個人の方が寄贈してくださった能舞台の活用方法を仙台市で模索した際、卸町の各所に文化施設がすでにあったこともあって、街全体で文化的な広がりを作ろうということになりました。そこで、この能舞台をもともとあったイベント倉庫に移築して「能-BOX」と名付けようということになったようです。こちらの施設では、能の公演、能講座の他、伝統芸能の催しなどで年間を通して活用されています。

誰でも楽しめる魅力的な公演やワークショップ

――公演はどのくらいの頻度で開催しているのでしょうか?

岩村さん:box-1を借りていただく公演と、10-boxが主催の公演をすべて入れると、月に平均3、4演目を、週末を中心に行っています。10-BOX主催・共催は、2カ月に1回位でしょうか。

――公演に来られる方はどういった方が多いでしょうか?

岩村さん:演目によりけりですが、大学生から20、30代の方など比較的若い方が多いかなと思います。ここで発表される作品が小劇場系で実験的な作品が多いので、そういった作品に敏感な方がよく観に来られますね。また、有名な劇団が来る時や能-BOXで公演がある際は、年配の方もいらっしゃることが多いです。

――ワークショップなども開催されていますが、どのような企画が多いのでしょうか?

まなぶ☆からだ VOL.4「能の神髄」より
まなぶ☆からだ VOL.4「能の神髄」より

まなぶ☆からだ VOL.1「からだを探るワークショップ」より(撮影:三村和彦)
まなぶ☆からだ VOL.1「からだを探るワークショップ」より(撮影:三村和彦)

岩村さん:主に開催しているものは、大きく分けて2つあります。まずは演劇に関するワークショップということで、2004(平成16)年から「国際演劇学校」という事業を実施していたのですが、こちらは一昨年終了し、昨年からいろいろな身体表現を学べる連続ワークショップ「まなぶ☆からだ」を行っています。このワークショップは本当にいろいろな体験ができる内容になっていて、例えば今年はパントマイム、能のお稽古、戯曲講座、それから声優の方の朗読講座を入れたりして大変好評を得ました。身体表現の豊かさを知るためのプログラムを組んだワークショップとなっています。それから、照明や音響などの舞台技術を学ぶスタッフワークの講座「舞台スタッフ・ラボ」を行っています。こちらは前身から数えると1987(昭和62)年から行っているものになります。基礎全般を学べる基礎コースと、より実践的な発展コースの2コースがあり、ここから実際に演劇の現場に入られる方もいらっしゃいます。

まなぶ☆からだ VOL.3「世界を作る言葉」より(撮影:糸田久美子)
まなぶ☆からだ VOL.3「世界を作る言葉」より(撮影:糸田久美子)

――参加者の反響はいかがですか?

岩村さん:このワークショップがきっかけで、さらに演劇のことを知ろうと他のワークショップを受けたり、実際に演劇に出演されたり、スタッフワークってこんなに面白かったんだと分かって観劇に来られる方が増えるなどの反響があります。能-BOXでは、講座のひとつに子どもが能を体験できる「子どものための能講座」というのがあるのですが、今年も申し込み開始から1日で定員になってしまったほどの人気です。

舞台スタッフ・ラボ
舞台スタッフ・ラボ

――企画はいつもどのように考えているのでしょうか?

岩村さん:ワークショップの企画は演劇関係者に相談したり、優れた企画があったら共催で実施していますし、演劇の招へい公演などは県外で実際に観劇した作品の中から優れたものを選び、劇団にお声がけしたりしています。また「せんだい卸町アートマルシェ」というイベントは、地元のプロデューサーや制作の方々が立ち上げた企画で、共催として10-BOXがお手伝いしています。企画によってはこちらで決めているものもありますが、やはり職員だけだと本当に求められているものが判断できなかったりアイデアに偏りが出る部分があるので、そこはいろいろな方に相談しつつ実施しています。

事業拠点としてのこれまで、そしてこれから

――「劇都仙台事業」とはどのような事業ですか?また、事業拠点としてどのような催しが開催されているのでしょうか?

岩村さん:10-BOXを運営している公益財団法人仙台市市民文化事業団は、仙台市と共にこれまで演劇を取り入れた街づくりを目指してきました。1990年代、仙台市内には60ほどの劇団があり、2000年頭には80団体ほどあって盛り上がっていたんです。その頃に前後して演劇プロデュース公演や戯曲賞も始め、20年以上にわたり“劇都仙台”として演劇の街をアピールしていました。

演劇は、生身の人間がその場で演じてその時間を観客が共有するので、親和性が高く、感情を揺り動かす力も強いと思います。また多様な考え方を受け入れることが出来るので、私たちの豊かな生活にとって必要不可欠だと思っています。10-BOXでは“劇都仙台”の拠点として、様々な形で演劇がこれまで以上に盛んになり、公演やワークショップを通して市民の方に演劇をより知っていただき、演劇が市民の皆様の豊かな生活に寄り添っていけるようになれればと常に感じています。

電動工具も常備した作業場
電動工具も常備した作業場

――今後開催されるおすすめの公演やイベントがあればご紹介ください。

岩村さん:京都の劇団と仙台の俳優で作る「烏丸ストロークロックと祭『祝・祝日』」が、力を入れている演目です。去年、劇団が仙台に取材に来て30分の短編を創り、それを長編にして東京と京都で公演を行ったんですが、かなり評価が高かった作品です。京都と仙台の演劇人の交流が図れた上、さらに東京でもいろいろな方との交流が生まれた事業です。今度、その彼らが戻ってきて再創作をするんです。外部の劇団の眼を入れながら、仙台や東北のことを一緒に考えられるという点で、価値のある事業だと自分でも感じています。

また、参加してみて面白いのは2019年冬に開催する「舞台スタッフ・ラボ2018」ですね。スタッフワークに少しでも興味のある方は受けていただくといいと思います。それから、先日大賞が決まった「せんだい短編戯曲賞」のリーディング公演を3月に開催する予定です。こちらも無料で気軽にご覧いただけるので、是非観に来ていただけたらと思っています。

資料室の扉に書かれた数々の著名人のサイン
資料室の扉に書かれた数々の著名人のサイン

――最後に、卸町の街の魅力について教えてください。

岩村さん:とても静かで、「仙台」駅にもアクセスしやすく、お子さんがのびのびと遊べる空間がある住みやすい場所です。それから市場が近いので、新鮮な食材が買えたり、朝一で行くと美味しいお寿司なども食べられます。それから最近は地下鉄「卸町」駅近くに「イオンスタイル卸町店」ができたので、買い物も随分便利になりました。また、卸商センターさんが年に2回実施している「ふれあい市」や、夏祭りをはじめとするイベントも結構盛んですね。

施設近くにある卸町公園
施設近くにある卸町公園

10-BOXを含め、音楽スタジオや美術関係施設など文化的に楽しめる施設も増えつつあります。具体的にいうと、能-BOXの隣にある「ハトの家」と呼ばれているイベント倉庫が、来年から美術関係者のアトリエ兼スタジオになる予定です。近所に「TRUNK」という施設があり、そちらのスタッフの方やギャラリー運営者の方が仙台市から委託を請けて実施するそうです。卸町全体をアートで盛り上げようという動きも活発になってきていますし、これからの発展がとても楽しみな街だと思います。

せんだい演劇工房 10-BOX
(公益財団法人 仙台市市民文化事業団 演劇振興課 演劇振興係)

岩村空太郎さん
所在地 :仙台市若林区卸町2丁目12-9
電話番号:(022)782-7510
URL:http://www.gekito.jp/
※この情報は2018(平成30)年11月時点のものです。