スペシャルインタビュー

偉大な先人たちを誇りに、150周年の節目を迎える「仙台市立片平丁小学校」

1873(明治6)年に開校した「仙台市立片平丁小学校」。校舎内はさながら郷土博物館のようで、いたるところにその歴史を感じる展示物が飾ってある。同校の歴史を知るということは、この街の歴史を知ることにもつながるだろう。2023(令和5)年に開校150年を控え、卒業生や周辺住民から向けられる眼差しはより熱いものとなってきているようだ。今回はそんな「仙台市立片平丁小学校」の我妻良行校長先生を訪ね、長年の同校の歩みや地域との関わりについてお話を伺った。

「仙台市立片平丁小学校」我妻良行校長先生
「仙台市立片平丁小学校」我妻良行校長先生

1873(明治6)年創立以来の歴史と伝統の歩み

――まずは「片平丁小学校」のこれまでの歩みをご紹介ください

我妻先生:本校は、幕末を代表する漢学者の1人、岡千仭(おかせんじん)によって開かれた「麟経堂(りんけいどう)」を前身とし、1873(明治6)年に設立されました。広瀬川の流れがあり、その向こうに青葉山を望む本校は、家老の屋敷があった場所でもあります。

幕末の漢学者であった岡千仭が開いた塾「麟経堂」を前身とする「仙台市立片平丁小学校」
幕末の漢学者であった岡千仭が開いた塾「麟経堂」を前身とする「仙台市立片平丁小学校」

時代の変遷とともに「五番小学校」、「育才小学校」と名称を変え、「片平丁小学校」になったのは1947(昭和22)年からです。

2023(令和5)年度には、創立150周年記念式典を予定しており、この節目の年に改めて本校の歴史や、学校を支えてくれている方、そして自然に恵まれた本校の周辺についても子どもたちに伝えたいと考えています。

「仙台市立片平丁小学校」の校舎外観
「仙台市立片平丁小学校」の校舎外観

――長年の歴史から、各界で活躍された、もしくは活躍中の卒業生も多いと思います。

我妻先生:校内を散策すればいろいろなものと出会えるのですが、校長室に掲げられている「以和為貴」の書は、赤痢菌を発見したことで知られる志賀潔先生が本校の創立80周年のときに書かれたものです。その志賀先生をはじめ、日本における電子工学の父と評される西澤潤一先生、河北新報社の創業者である一力健治郎さんも本校の出身です。

校内にはその偉大な歴史を感じる展示物の数々を目にすることができる
校内にはその偉大な歴史を感じる展示物の数々を目にすることができる

地域との連携や、人とのつながりを生かした学びも充実

――現在の学校についてご紹介いただけますでしょうか。

現在は、各学年3クラスずつの18クラスに、特別支援学級2クラスを加えた全20クラス、545人の子どもたちが通っています。150年近い歴史と、市内唯一となる芝生の校庭も特徴のひとつです。

――学校の教育目標や、その実現のために力を入れていることにはどんなものがありますか。

我妻先生:教育目標は、“志を持ち、心豊かにたくましく生きる子供の育成”です。その実現に向け、目指すべき児童像としているのは、“思いを伝え、高め合う子”、学びを生かし、つなげる子”、“自分を見つめ、挑戦する子”の3つです。ただ学ぶだけでなく、人と関わりながら力を合わせて積極的に様々なことに挑戦してほしいと願っています。

市内唯一の芝生の校庭
市内唯一の芝生の校庭

――特徴的な取組や、学校行事、クラブ活動などを教えてください。

我妻先生:クラブ活動については、年10回程の活動をしています。広瀬川に沿って歩いたりする自然探索クラブ、バスケットボール、バドミントンといった定番のクラブの他に、珍しいものとして琴や華道の先生をお招きすることもある伝統芸能クラブなどがあります。特設のクラブとして100周年のときに立ち上げられたブラスバンド部もあります。

特色ある取組としては、1914(大正3)年からつづく「上巳の会(じょうみのかい)」というものがあります。もともとは、学校に雛人形を飾って文芸の集いを開いたところが始まりだそうですが、現在は、お手玉、けん玉、竹馬などを披露することで、日本の伝統文化に触れる集いとなっています。コロナ禍で開催が危ぶまれたのですが、映像を用いるなど規模を縮小してこの伝統行事を続けることができました。

それ以外の特徴的なものとしては、北海道の「白老町立白老小学校」との交流です。その昔、北海道を警護するため、仙台藩による藩士の派遣があり、任務を終えてからも現地に留まる者も多かったそうです。そのような背景から「白老小学校」との交流が始まり、その3年後となる1978(昭和53)年には仙台市と白老町は姉妹都市になりました。学校長と教員の代表、PTA、そして数名の子どもたちが現地を訪ね、ホームステイを含む交流を行っています。

アイヌ民族の絵画も飾られている
アイヌ民族の絵画も飾られている

――周辺地域との関わりはいかがでしょうか。

我妻先生:2022(令和4)年10月にスタートする「コミュニティ・スクール」は、地域の方たちが学校運営に参画できる仕組みを持つことを目的とした取組です。これまで学校支援地域本部という仕組みはあったのですが、地域の方が実際に当事者として学校の様々な活動に参画するまでには至っていませんでした。

この「コミュニティ・スクール」により、学校と地域による双方向の連携・協働を通して、“学校を核とした地域づくり”につなげていきたいと考えています。

近隣にある「東北大学 片平キャンパス」
近隣にある「東北大学 片平キャンパス」

それ以外では、近隣の「東北大学」、「宮城教育大学」、「東北学院大学」との連携を深めています。「東北大学」は防災関係で、「東北学院大学」とは教員を目指している学生が毎日ボランティアとして来てくれるなどの交流があります。ほかにも、「宮城県工業高校」からは、生徒がプログラミングの指導者として来てくれています。このような連携も周辺に教育機関が点在しているからこそ実現できていると感じています。

また、この場所ならではということでは、2023(令和5)年4月から6月にかけて、市内で花と緑をテーマにした地方博覧会「全国都市緑化仙台フェア」が開催されるのですが、5年生の子どもたちがアートプランターを制作し、花を植えて会場に展示するという取組に本校も関わらせていただく予定です。

人、歴史、自然がそろう恵まれた環境

青葉山や広瀬川をはじめ、豊かな自然が身近に広がる
青葉山や広瀬川をはじめ、豊かな自然が身近に広がる

――最後になりますが、「片平丁小学校」周辺の教育環境について聞かせてください。

我妻先生:大変恵まれた地域だと思います。例えば読み聞かせで協力してくださる方も、回ごとに工夫をされ、どうすれば子どもに喜んでもらえるかということを真剣に考えてくださっています。ご自身で納得できる読み聞きかせができたときなどは、うれしそうな表情で帰路につかれ、そうした様子を拝見するたびに、本当に感謝の気持ちでいっぱいになります。

専門的な知識を持つ方にお話を伺いたいときには、声掛けをすれば、実に多くの方がそれに応えてくれます。人、歴史、自然、この全ての要素がそろっているすばらしい環境ではないかと思います。

仙台市立片平丁小学校
仙台市立片平丁小学校

仙台市立片平丁小学校
校長 我妻良行 先生

所在地:宮城県仙台市青葉区片平1-7-1
電話番号:022-223-3846
URL:https://www.sendai-c.ed.jp/~katahira/index/
※※この情報は2022(令和4)年6月時点のものです。